精油は植物のいろいろな部分から抽出されます。花、茎、葉、果実、実などからです。この中に含まれれている貴重な成分を取り出して精油を製造しています。
では精油はどのような方法で抽出されているのでしょうか?
こちらでは、数ある製造方法の中で、アロマ基礎知識として検定試験でもでてくる主要な3つの方法に加え、たまに使われる2つの合計5つの方法について説明します。
水蒸気蒸留法(STEAM DISTILLATION)
水蒸気蒸留法はその名のとおり、水蒸気をつかって精油を抽出する方法です。
この方法は使用する装置が比較的安価で、しかも非常に簡単な方法です。
なので、非常に多くの精油が抽出されています。
しかし、植物によっては熱と水にさらされて本来の香りや成分が失われる場合もあります。
また、ワインの製造と同様に、この方法もデリケートな部分があるので、この装置の操作について、細かい注意点と豊富な経験が必要になります。製造方法により精油の質に影響を及ぼすことがあります。
また、この方法のメリットとしては、もうひとつ「芳香蒸留水(フローラルウォーター)」がつくられるということです。
この芳香蒸留水は精油の成分が微量に含まれていますが、とても濃度が薄いので直接肌に触ることもできます。化粧水を作ったり、ほのかに香るスプレーをつくったりすることができます。
製造方法
- 植物材料をドラム缶のような蒸留窯に詰め込みます。
- 植物の下にある水が沸騰され、その蒸気を蒸留窯へ吹き込み、通過する際に植物を温めます。
- 植物が蒸され、蒸気と共に芳香成分が気化し、運び出されます。気化した植物に含まれる化学物質が精油となります。
- 蒸気は、冷却コイルにそって移動します。蒸気は濃縮され液化し、受け皿に集められます。
- 精油は、分離した層を形成するために、2 つに分けられ収集されます。
※ドラム缶容器内の熱、水、酸素は全て出来上がる精油の性質に影響を与えます。
※精油の成分のいくつかは、植物の中には存在しないものもあります。
この方法により抽出される精油:柑橘系の精油、ローズアブソリュート、ジャスミン、ベンゾイン以外のほぼすべての精油がこの方法で製造されています。
圧搾法(COLD-PRESS EXTRACTION)
圧搾法は、主に柑橘類の皮からオイルを抽出するために使われる方法で、外側の皮を絞って得る方法です。
これは柑橘類の精油の大部分が果皮の表面のつぶつぶの中に蓄えられています。
この方法は水蒸気蒸留法とは違い、熱を加えないので、熱による成分変化もありません。
そのため、自然な状態の精油が抽出されます。
一方、生育時に殺虫剤やその他の保存剤などの化学薬品が使われずに生育されているのが最善であり、オーガニックなものを強くおすすめします。
また、この方法のデメリットは、絞った時にカスなどの不純物が混入しやすく、劣化しやすいです。
消費期限は通常の精油よりも短めに設定されています。
製造方法
- 果実全体を穴をあける装置に入れられ、一か所に集められます。
- 果実全体を圧搾して果汁と油を絞り出します。
- 生成される油やジュースには、皮などの果物からの固形物がまだ含まれているため、機械のローラーを使って遠心方で分離され、液体から固形物をろ過します。
- 油はジュース層から分離し、別の容器に吸い上げられます。
この方法により抽出される精油:柑橘系の精油(オレンジ・スイート、レモン、グレープフルーツ、ベルガモット、マンダリン等) ネロリはオレンジの花から来ているので、水蒸気蒸留法なので注意。
揮発性有機溶剤抽出法(SOLVENT EXTRACTION)
この方法は水蒸気蒸留法などの方法ではできない水分に弱い繊細な植物やまたは揮発性が弱く蒸留に適さない植物などに使われる方法です。
この方法では濃縮された香りが高い成分が抽出されます。
細かい香りを要求される香水はこの方法が好まれます。
一方、石油エーテルやヘキサンなどの薬品を使うので、中には有機溶剤が多少残る場合があると言われ、精油とは区別するという考え方もあります。
製造方法
- 芳香植物を石油エーテルやヘキサンなどの揮発性の有機溶剤の中に入れて芳香成分を溶かします。
- 芳香植物の中に含まれている天然のワックス成分が溶け出します。
- 有機溶剤を蒸発させます。
- コンクリートと呼ばれる半固形状のものが残ります。
- エタノールを使って芳香成分とワックスを分離させます。
- エタノールを取り除きます。
この方法で、抽出部位が花のものは「アブソリュート」と呼ばれ、樹脂の場合は「レジノイド」と呼ばれます。
この方法により抽出される精油:ローズアブソリュート、ジャスミン、ベンゾインなど。
超臨界流体抽出法(CO2 EXTRACTION)
最近になって発明された方法です。
この方法も成分を傷めず、植物本来の香りが抽出できる方法です。
通常の精油より天然成分が豊富で、香り高いのが特徴です。
しかし、この装置はかなり高額なため、一般的ではありません。
製造方法
- 二酸化炭素を加圧し、液体化します。(「超臨界状態」)
- ポンプにより植物が入った容器に送り込まれます。
- ガスの液体特性により、二酸化炭素は天然植物の溶媒として機能し、植物から油や顔料や樹脂などの他の物質を引き出します。
- 芳香成分が液体になった二酸化炭素に溶解します。
- 二酸化炭素は自然の圧力に戻され、蒸発してガス状に戻りますが、芳香成分が残り、オイルが生成されます。
※ジャーマン カモミールなどこの方法を用いられることもある。
油脂吸着法(ENFLEURAGE)
揮発性有機溶剤抽出法が発明される以前によく行われていた抽出方法です。
こちらもデリケートな植物に対して使用されていました。
ほぼ手作業で行われるこの方法は、一般的にはほとんど使用されていません。
常温の油脂を使う方法を「冷浸法」と加熱された油脂を使う方法「温浸法」とあります。
製造方法
- 高度に精製された油脂をシャーシと呼ばれる容器に流します。
- 生花もしくは花びらを油脂の上に置き、押し込みます。
- 何日か放置します。
- 花びらが枯れたり香りが出ない状態になったら適宜交換します。
- 油脂が飽和状態になったら、アルコールで油と芳香成分を分けます。
- アルコールを蒸発させます。
この方法は現在の揮発性有機溶剤抽出法へ移行していきました。
まとめ
今回ご紹介した方法の中の、「水蒸気蒸留法」「圧搾法」「揮発性有機溶剤抽出法」は検定の出題範囲です。
このように、自然の力を凝縮された精油には、植物の本来の成分が濃縮されているのが分かります。
また、作成方法を知っていると、精油の性質や原理、柑橘系の精油が劣化しやすい原因など分かってとても勉強になりますね。
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